病気発覚、そして別れ

      【病気発覚】

          あの日は、まさに青天の霹靂だった。

          今でも悪夢だと思いたい。

 

          忘れもしない、6月30日の朝。

          起き抜けに、ママから「夜中に吐いたみたい」との一言。

          ここ数日、なんか具合が悪そうだって話していた矢先のこと、急遽病院へ連れて行き

          検査して貰うことに。

 

          結果がどうだったのか心配したまま1日が終わり帰宅。

          歩きながら「胃腸の薬とか出てんのかなぁ・・・」 そんなことを呑気に考えてた。

          帰宅すると、ママは義母の用事で外出中。  じゅでぃ はクッションでグッタリしていた。

 

          先に帰宅してたナツから、じゅでぃの事、今日の病院での検査結果を告げられる。

          涙目のナツを見て、嫌な予感が走った。

          そして、ナツの口から出た言葉。  それは・・・

 

          胆管癌・・・・  肝臓に広範囲の転移・・・・  処置のしようが無い・・・・

 

 

          じゅでぃが癌?  えっ? 死んじゃうってこと?  なんで? どうして?

          なに言ってんの?  はぁ?  バカ言ってんじゃないよ!?

 

          そういう言葉を口に出さないでいるのが精いっぱい。

          茫然としていると、ママが帰宅。

          ママからあらためて今日の診断結果、ドクターからの話しを伝えられる。

 

            胆管癌から肝臓に転移、肝臓の大半が癌に侵されていて手術による切除は出来ない。

            手術する=全摘出となってしまう。   当然、生きていられない・・・・

            末期癌・・・・   余命は じゅでぃ次第、病巣の進行次第・・・

 

          そうか・・・・

          そういうのがやっとだった。

          そして、この日から じゅでぃの壮絶な闘病が始まってしまったのだ。

 

 

 

 

 

      【突然の別れ】

          とうとうこの日が来てしまった。

          朝から水を呑んでも吐き戻すようになった じゅでぃ。

          2週間ほど前から肝臓が急激に肥大、胃やその他の内臓、横隔膜を圧迫しだした。

          ここ1週間、口にしているのは流動食だった。

 

          ママが急遽病院へ連れて行った。

          お昼頃、ママからのメール。  ギクッとしながら開いてみると、

 

            「吐き気止めの注射、皮下補水をして貰ってきた。 今は落ち着いてる」

 

          少し安心した。

          その日の帰宅、いつものウォーキングをやめてバスに乗る。

          バスに乗るといつもより15〜20分くらい早く帰れる。 はやく じゅでぃ のもとへ。

 

          帰宅すると、いつものクッションに横たわり、辛そうにしている じゅでぃ。

          急いで着替え、手を洗って じゅでぃのもとへ。

          声を掛け、頭を撫でてやる。

 

            「おぃ、大丈夫か」 「お父さん、帰ってきたぞ」

 

          眼だけ動かしてオレを見つめている じゅでぃ。

          ふっと気が付くと、少し便が出ている。 良く見ると、おしっこもだ。

 

            「うん、良いよ良いよ。 大丈夫だよ。 そのままして良いよ」

 

          そう声を掛け、トイレットペーパーでお尻を拭いてやる。

          もう血尿、血便になっているようだ。

          ママが慌ててドクターに電話、指示を仰ごうとしてる。

 

            「じゅでぃ。 大丈夫、おしっこしても良いよ。 大丈夫だよ」

 

          声を掛け続け、お尻を拭いていると、突然、ガバッと上半身を起こした。

          でも、立ち上がった両前足は力が入らずガクガクしてる。

 

            「ん? どうした? ムリすんなよ」

            「横になっていろよ」

            「良いよ、大丈夫だよ」

 

          そう声を掛けても、ガンとして聞かない。 ガクガクしてるくせに。

          相変わらず頑固なヤツだなぁ。

 

          そんな頑固者のじゅでぃ。 オレを見つめる目が、「ごめんね」って言っているような

          寂しい表情をしてた。

 

            「大丈夫、良いから! ほら、ムリすんなって!」

 

          両前足に手を添え、クッションに横たえようとしたとたん。

          まるでドラマの様に前にガクッと頭が落ち、倒れこんだ。

 

            「おいおい、乱暴だなぁ」

 

          じゅでぃの背中に手を添え横向きにした時。 目を見開いたままのじゅでぃは、

          もう息をしていませんでした。

 

              待てよ!  なんだよ!  どうしたっていうんだよ!

              まだ逝くなよ!  逝くなって!  おい、戻ってこい!

 

          いくら呼んでも、さすっても、揺らしても。  もう反応はしませんでした。

 

 

              7月25日PM19:30。 享年9歳3カ月と16日。
              癌が判ってから26日。

 

          本当は苦しくて痛かったんだろう。

          でも彼女は吠えせず鳴きもせず、じっと、じっと耐えていたようです。

          最後の最後まで、彼女らしく静かにお行儀良く、旅立っていきました。

 

 

 

 

 

      【虹の橋へのお見送り】

          綺麗な顔で、まるでいつも通りに眠っているような じゅでぃ。

          翌26日PM13時。 荼毘に付され虹の橋へ向かいました。

 

          オレやママの好きな黄色い花に囲まれた じゅでぃ。

          雨だからなのか、それとも添えた花から落ちた滴なのか。

          最後のじゅでぃの姿には、目元に涙のような滴が1粒、付いていました。

 

          さよならだ。 さよならだね、じゅでぃ。

          よく頑張ったね。  偉かったよ。

          有難う。 本当に有難うね、じゅでぃ・・・

 

 

          今回のことで、改めて「虹の橋」という話を読み返しました。

 

          旅だった動物たちは橋のたもとで幸せに遊んでいるそうです。

          そして、何時の日か別れた飼い主が虹の橋に現れ、寄り添うように二度と離れること無く橋を

          渡っていくそうです。

 

          彼女には元の飼い主が居ました。 ある日突然に会うことが出来なくなった人です。

          だからきっと、オレやママではなく、会いたかったであろう元の飼い主と再会して、虹の橋を

          渡って行ったでしょう。    とても幸せな気持ちで。

 

          ちょっと悔しいし寂しいけど、それが彼女には一番幸せなことだね。

          寂しさも苦しさも痛みからも解放されて、やっと安心して過ごせるんだもんね。

          良かったね、じゅでぃ。